最近、「なんだか寝つきが悪い」「朝までぐっすり眠れない」といった悩みを抱え、睡眠サプリに注目している方は非常に多いでしょう。しかし、店頭やネット上には数多くのサプリが並び、実際にどの成分が効くのか、そして大切な安全性は大丈夫なのかと、不安を感じてしまうのも当然です。
そこでこの記事では、睡眠サプリメントの主要な成分に焦点を当て、それぞれの効果や体への働き、そして見過ごせない安全性や注意点について解説します。単なる商品紹介ではなく、あなたの体質や悩みに合った成分を賢く見極めるための本質的な情報を提供することが目的です。
この記事を参考にして、質の高い休息を手に入れるための具体的な知識を手に入れてみてください!
快眠を助ける主要な成分と効果
睡眠サプリを選ぶ際、最も気になるのは「どんな成分が入っていて、それがどう体に作用するのか」という点ではないでしょうか。質の高い睡眠をサポートする成分は多岐にわたりますが、ここでは特に注目されている主要な成分について、詳しく見ていきましょう。
アミノ酸系成分:リラックスや深部体温の調節をサポート
アミノ酸は、私たちの体を作るタンパク質の素であるだけでなく、脳内で神経伝達物質としても働き、睡眠や気分を深くコントロールしています。睡眠サプリでよく見かけるアミノ酸系成分は、リラックスを促したり、眠りに入るために必要な「深部体温」を下げる作用を助けたりすることが知られています。
GABA(ギャバ)の鎮静作用と体への影響

GABA(ガンマアミノ酪酸)は、私たちの脳や脊髄に存在する代表的な「抑制性」の神経伝達物質です。抑制性とは、興奮した神経を落ち着かせ、過度な活動を抑える働きを指します。
現代社会では、仕事のストレスや情報の多さから、私たちの脳は常に興奮状態に陥りがちです。この興奮がなかなか収まらないと、体が疲れているのに頭だけが冴えてしまい、「寝つきが悪い」という状態(入眠困難)を引き起こします。
GABAはこの興奮状態にある神経細胞の活動を穏やかにする役割を果たします。またGABAは体内に元々存在する成分であるため、比較的安全性も高いとされているのも特徴です。
グリシンがもたらす睡眠の質の改善

グリシンは、アミノ酸の中でも最もシンプルな構造を持つ成分です。体内でコラーゲンの原料になったり、生体内で様々な働きをしていますが、特に睡眠への関与が近年注目されています。
グリシンが睡眠に与える効果として特筆すべきは、深部体温(体の内部の温度)の低下を促進する働きです。人は眠りにつく際、体の深部体温を下げ、反対に皮膚表面の温度を上げることで熱を放出し、深い眠りに入りやすくなります。
グリシンの摂取は、手足などの末梢の血流を増やし、体内の熱を効率よく外へ逃がすのを助けることが研究で示されています。その結果、スムーズに深部体温が下がり、寝つきが良くなる効果や、質の高いノンレム睡眠(深い睡眠)が増えることが期待できます。
「寝たはずなのに疲れが取れない」「眠りが浅い気がする」といった熟眠障害の悩みを持つ方や、冷え性でなかなか寝付けない方にとって、グリシンの体温調節作用は非常に有益かもしれません。
L-テアニンによる心身のリラックス効果

L-テアニンは、主にお茶の葉に含まれるアミノ酸の一種です。特に玉露や抹茶などの高級茶に多く含まれています。昔から、お茶を飲むと心が落ち着くと言われてきましたが、この「落ち着き」をもたらす作用の主役がL-テアニンだと考えられています。
L-テアニンの最大の特徴は、脳のα波(アルファ波)を増やす働きです。α波は、目を閉じたり、リラックスしている時、集中している時などに出る脳波で、覚醒している状態と眠っている状態の中間にあたる、心身が穏やかで落ち着いた状態を示します。
L-テアニンを摂取すると、緊張や興奮が和らぎ、心身が穏やかなリラックス状態へと導かれます。眠気そのものを強制的に引き起こすというよりも、寝る前の精神的な緊張をほぐし、自然な眠りへ移行するのを助けてくれるイメージです。
ハーブ・植物由来の成分:穏やかな気持ちを促す役割
古くから世界各地で、特定のハーブや植物が「眠りを誘う」「心を落ち着かせる」ために利用されてきました。これらの植物に含まれる天然の成分が、穏やかに心身に作用し、自然な休息を促します。
バレリアンなどの伝統的なハーブの働き

バレリアン(セイヨウカノコソウ)は、ヨーロッパやアジア原産のハーブで、古くから不眠や不安の緩和に使われてきた歴史を持ちます。
バレリアンに含まれる成分が、脳内のGABAの作用をサポートしたり、特定の受容体に影響を与えたりすることで、軽い鎮静作用や抗不安作用を発揮すると考えられています。その結果、寝つきの悪さや、夜中に何度も目が覚めてしまう中途覚醒の改善に役立つと言われています。
ハーブ由来であるため、穏やかな作用が期待されますが、人によっては独特の風味や匂いを感じることがあるため、注意が必要です。
ビタミン・ミネラル:睡眠サイクルに関わる栄養素
睡眠の質は、特定の成分だけでなく、体全体の栄養バランスにも大きく影響されます。特にホルモンバランスや神経伝達物質の合成に関わるビタミンやミネラルは、睡眠サイクルを円滑にするために欠かせません。
マグネシウム

マグネシウムは、「天然の精神安定剤」とも呼ばれ、体内の多くの酵素反応に関わる重要なミネラルです。筋肉の緊張を緩めたり、前述したGABAの働きを助けたりする作用があります。このため、マグネシウムが不足すると、不安感やイライラ、筋肉のけいれんなどが起こりやすくなり、結果として眠りを妨げることがあります。
ビタミンB群

特にビタミンB6は、セロトニンやメラトニンといった睡眠に関わる神経伝達物質の合成に必要な補酵素(体の反応を助ける物質)として機能します。セロトニンは「幸せホルモン」と呼ばれ、日中の気分を安定させ、夜になると睡眠ホルモンであるメラトニンの原料となります。ビタミンB6が十分に摂取されていることは、規則正しい睡眠サイクルの土台作りとなります。
これらのビタミンやミネラルは、それ単体で強い眠気を引き起こすわけではありませんが、体内のバランスを整え、他の睡眠成分が働きやすい環境を作る上で非常に重要な役割を担っています。
睡眠サプリを選ぶ前の重要知識
特定の成分が睡眠を助ける仕組みがわかったところで、次にサプリメントそのものの位置づけや、選び方の基本的な考え方について解説します。
サプリメントが睡眠の質に貢献する仕組み

サプリメントは、「栄養補助食品」に分類され、日々の食事だけでは不足しがちな栄養素や特定の成分を補給することで、健康維持や美容、そしてこの場合は「睡眠の質」の改善を目的とするものです。
睡眠の質が低下する原因は、ストレス、生活習慣の乱れ、特定の栄養素の不足など多岐にわたります。サプリメントは、これらのうち「特定の成分の不足を補う」「リラックスを促す神経系の働きをサポートする」「体温調節など睡眠に関わる生理機能を補助する」といったアプローチを通じて、間接的かつ穏やかに、自然な眠りへの移行をサポートします。
重要な点として、サプリメントは根本的な病気を治療する薬ではないことを理解しておく必要があります。あくまでも、健康な体の土台作りを助ける「補助役」として捉えることが大切です。
睡眠サプリと医療用医薬品との違い

睡眠サプリを選ぶ際に、医療機関で処方される「睡眠薬」と混同している方もいます。この二つは、法的な位置づけから作用の仕方まで、根本的に異なります。
| 項目 | 睡眠サプリメント(食品) | 医療用睡眠薬(医薬品) |
| 目的 | 栄養補給・健康維持・生活習慣の補助 | 疾病の治療・症状(不眠症)の改善 |
| 作用の仕方 | 穏やかで、自然な生体機能をサポート | 脳の中枢神経に直接作用し、強制的に眠気を誘発 |
| 法的位置づけ | 食品(栄養機能食品、特定保健用食品など) | 医師の処方箋が必要な「医薬品」 |
| 安全性 | 基本的に高いが、過剰摂取には注意が必要 | 医師の指示に従う必要があり、副作用や依存性のリスクがある |
睡眠薬は、不眠症という病気を治療するために、強力に作用し、比較的即効性があります。その反面、副作用や依存性のリスクが伴うため、医師の厳重な管理が必要です。
一方、睡眠サプリは体内の不足を補い、自然な眠りのサイクルを整えることを目指しています。作用は穏やかで、即効性よりも継続的な摂取による体質の改善に期待します。ご自身の不眠が軽度なもので、まずは生活習慣や栄養面から見直したいという方に適しています。
不眠のタイプ別で考える成分選びのヒント
不眠症は一つではありません。寝付けない、途中で起きてしまう、熟睡感がないなど、人によって抱える悩みは異なります。ご自身の不眠のタイプを正確に理解し、それに合った成分を選ぶことで、サプリメントの効果をより効率的に引き出すことができます。
寝つきが悪い(入眠困難)タイプ

布団に入ってから30分以上経ってもなかなか眠りにつけない状態が続く場合、この入眠困難タイプに該当します。多くの場合、日中のストレスや不安、または寝る直前のスマホ操作などによる脳の興奮状態が原因で、リラックスモードに切り替われないために起こります。
このタイプには、興奮した神経を穏やかに鎮め、速やかにリラックス状態へと導く成分が最適です。
- L-テアニン:脳内でα波の発生を促し、心身を穏やかなリラックス状態に導きます。強い眠気で無理やり寝させるのではなく、緊張を和らげ、自然な眠りへ移行するのをサポートします。
- GABA(ギャバ):抑制性の神経伝達物質として働き、過剰な興奮を落ち着かせる作用があります。ストレスや不安で脳が冴えてしまっている状態を鎮静化するのに有効です。
- グリシン:深部体温の低下を促し、体が眠りやすい環境を整えるのを助けます。体温調節の乱れが原因で寝付けない人にも適しています。
夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)タイプ

一度眠りについても、夜中に何度も目が覚めてしまい、その後なかなか再入眠できない状態です。浅い睡眠が続くことや、不安感、年齢による睡眠サイクルの変化などが原因で起こりやすいとされています。
そんな方には睡眠の「質」を高め、途中で目覚めてもスムーズに再入眠できる安定性をサポートする成分が役立ちます。
- マグネシウム:「天然の精神安定剤」とも呼ばれ、神経の興奮を鎮め、筋肉の緊張を緩める働きがあります。深いリラックス状態を保ち、睡眠の安定性を高めるのに貢献します。
- GABA:睡眠の質が安定しない原因の一つである、浅い眠りの状態からの覚醒を防ぐよう、神経を穏やかに保つサポートをします。
- バレリアン:古くから鎮静作用を持つハーブとして利用されており、穏やかな抗不安作用を通じて、夜間の不安による目覚めを和らげるのに有効な場合があります。
眠りが浅い・寝ても疲れが取れない(熟眠障害)タイプ

寝る時間自体は確保できているにもかかわらず、「眠った気がしない」「朝起きた時に体がだるい」「夢ばかり見ていた」と感じる状態です。深い睡眠であるノンレム睡眠(徐波睡眠)が不足していることが主な原因です。
そんな方には 体内の生理機能に働きかけ、睡眠の質、特に深い眠りの割合を増やすことを目的とした成分を選びます。
- グリシン:研究により、グリシンが深いノンレム睡眠の時間を増加させることが示唆されています。寝つきだけでなく、睡眠の「質」を向上させたい場合に特に注目すべき成分です。
- ビタミンB群(特にB6):睡眠ホルモンであるメラトニンの合成に不可欠な栄養素です。体内で睡眠サイクルを整えるための土台となるため、深く質の高い睡眠を得るための準備として重要です。
- L-テアニン:リラックス効果により、眠りの質が乱れる原因となるストレスを軽減し、全体的な睡眠の安定化に寄与します。
ご自身の不眠の悩みを明確にし、その悩みに最も適した作用を持つ成分を選ぶことが、サプリ選びの効率と満足度を大きく高めます。
成分の安全性と体への影響
サプリメントは食品であり、安全性が高いとされていますが、体に取り入れるものである以上、注意すべき点がいくつかあります。特に、過剰摂取や他の薬との飲み合わせについては、十分に理解しておく必要があります。
過剰摂取が引き起こす可能性のある問題

サプリメントは「体に良いものだから」といって、パッケージに記載された目安量を守らずに大量に摂取するのは避けるべきです。サプリメントに含まれる成分は、通常の食事では摂りづらい高濃度で配合されていることがあります。
例えば、水溶性であるグリシンやテアニンなどは、過剰に摂取しても比較的速やかに尿として排出されるため、重篤な問題につながる可能性は低いとされています。しかし、一時的に腹部に不快感を感じたり、下痢を引き起こしたりすることがあります。特に、グリシンやGABAを多量に摂取した場合、消化器系に負担がかかる可能性があります。
パッケージに記載されている「一日の摂取目安量」は、科学的なデータや安全性に基づいて設定された量です。効果を急ぐあまり量を増やしても、効果が増すわけではなく、むしろ体調不良の原因になる可能性があることを理解し、必ず正しい用量を守ってください。
既に他の薬を服用している場合の飲み合わせ

サプリメントを摂取する上で、最も注意が必要なのが、既に病院で処方された薬を飲んでいる場合の「飲み合わせ(相互作用)」です。この相互作用によって、薬の効果が強くなりすぎたり、反対に弱くなったり、有害な作用が出やすくなったりする可能性があります。
睡眠サプリに含まれるリラックス成分や鎮静作用を持つ成分の中には、医療用の睡眠薬や精神安定剤(抗不安薬)、抗うつ薬などと作用が重複してしまうものがあります。
自分で判断せずに、現在服用しているすべての薬を医師や薬剤師に伝え、飲み合わせについて事前に相談することが、安全にサプリメントを利用するための絶対条件です。
安全なサプリを見分けるための成分表示の読み方

パッケージに書かれている情報を正しく読み解くことは、安全で効果的なサプリ選びの第一歩です。成分表示を読む際に、特に注目すべきポイントを解説します。
- 主要成分の含有量をしっかりと確認する:
- 「〇〇が入っています」と宣伝されていても、実際にどのくらいの量(例:グリシン3000mg、L-テアニン200mgなど)が入っているかを確認しましょう。研究で効果が確認されている量(有効量)に近い量が配合されているかどうかが、そのサプリメントの質を見分ける重要な手がかりです。安価なサプリの中には、宣伝成分がごく少量しか含まれていないケースもあります。
- 原材料名すべてに目を通し、アレルゲンや添加物をチェックする:
- 主成分以外に、添加物(着色料、保存料、香料など)や、体質によってはアレルギーの原因となる可能性のある成分(例:乳成分、ゼラチン、特定の植物エキスなど)が含まれていないかをチェックしましょう。アレルギー体質の方は特に注意が必要です。
- 「機能性表示食品」かどうかを確認する:
- 日本国内で販売されているサプリメントの中で、「機能性表示食品」と記載されているものは、その商品が持つ科学的根拠に基づいた機能性(例:「睡眠の質(眠りの深さ)を高める機能があります」)が消費者庁に届け出られている商品です。この表示があることで、一定の信頼性をもって選ぶことができます。単なる健康食品よりも、効果の期待値が高いと判断する材料になります。
- 製造・品質管理体制を確認する:
- 「GMP認定工場」など、適切な製造管理と品質管理の基準(Good Manufacturing Practice)を満たした工場で製造されているかどうかの記載があるかも、安全性の判断材料となります。適切な管理下で製造されていることは、品質の安定性に直結します。
症状が続く場合に医師や専門家に相談する目安

睡眠サプリを試してみても、なかなか寝つきが改善されない、またはかえって体調が優れないと感じる場合は、サプリメントの摂取を一時中断し、専門家の意見を聞くべきタイミングかもしれません。
睡眠サプリは、あくまで「栄養の補助」です。あなたの不眠が、ストレスや生活習慣の乱れだけでなく、「不眠症」や「睡眠時無呼吸症候群」などの病気が原因で引き起こされている可能性も考えられます。これらの病気は、サプリメントで治療できるものではなく、適切な医療的介入が必要です。
- 目安となる症状:
- サプリを2~3ヶ月試しても、全く効果を実感できない場合。サプリメントは体質改善に時間がかかるものですが、この期間を過ぎても変化がない場合は、成分が合っていないか、別の原因がある可能性があります。
- 強い不安感や抑うつ気分を伴い、睡眠の質だけでなく日中の生活にも大きな支障(仕事や家事に集中できない、イライラが続くなど)が出ている場合。
- 日中の耐えられないほどの強い眠気があり、車の運転など危険な状況になる場合。
このような場合は、睡眠専門外来、心療内科、またはかかりつけの内科などに相談することを強く推奨します。専門医は、あなたの睡眠状態を客観的に評価し、必要であれば医学的な治療(薬物療法や認知行動療法など)や、より正確なアドバイスを提供してくれます。不眠を放置せず、専門家の力を借りることが、早期回復への一番の近道です。

睡眠で悩んでいた社会人2年目の25歳。
自分に合った枕に出会ったのをきっかけに、睡眠の質が改善。「この経験を皆にも体感してほしい」という想いと「寝具を買う時に試せる場所がない」という自身の経験からりばていを開設。スリーププランナーの資格を取得し、専門的な視点で寝具選びのお手伝いをしています。
